2025年6月4日、「貨物自動車運送事業法」の一部が改正・施行されました。今回の改正の中でも特に注目されているのが、「運送の再委託は2次請けまでに制限する」という新ルールです。
現場で日々走る中小の運送会社にとって、今回の改正は決して他人事ではありません。本記事では、何が変わったのか、どんなリスクがあるのか、そしてどんな備えが必要なのかをわかりやすく整理します。
1. トラック新法で何が変わったのか?
2025年6月4日施行の改正内容で大きく影響するのは、以下のポイントです:
- 元請 → 1次請 → 2次請までの委託は可能
- 3次請け以降への再委託は禁止
- 違反した場合は、運送事業者だけでなく元請業者にも行政処分が科される可能性がある
これは、いわゆる「多重下請け構造」を是正するための措置です。荷主から見えにくい再委託先まで仕事が流れてしまうことで、責任の所在が不明確になり、末端のドライバーの待遇や安全管理にも悪影響が出ていました。
2. なぜ「2次請けまで」に制限されたのか?
背景には以下のような問題意識があります:
- 過度な中抜きによる運賃の圧縮
- 運送実態がない名義貸し業者の存在
- 荷主と実運送者の間に距離があり、責任の分担が不明瞭
この構造では、最終的に運ぶドライバーや実運送会社が“割を食う”形になりやすく、安全管理やサービス品質にも影響が出やすいのが実態です。こうした状況を是正し、「誰がどの責任を担うのか」を明確にするために、国土交通省は委託構造の透明化に踏み切りました。
3. 違反したらどうなる?──リスクの現実
今回の改正では、違反があった場合に行政処分の対象となるのは**再委託した側(元請や1次請)**です。たとえば:
- 委託先がさらに違法な3次請けへ流したことが発覚
- 元請が委託構造の把握を怠っていた
こうしたケースでは、業務停止命令や許可取消処分の可能性もあります。知らなかったでは済まされない時代が、すでに始まっています。
4. 中小運送会社が今から取るべき対応策
(1)現在の委託構造の棚卸し
- 自社がどこから仕事を受けていて、それが何次請けにあたるのか
- 下請けに回している場合、それが2次請け以内かどうか
まずは社内・協力会社間の委託関係を「見える化」しましょう。
(2)契約書・運送指示書の整備
- 「書面でのやりとり」がこれまで以上に重要になります
- 誰が誰に委託しているのか、責任の所在が書面で分かるように
とくに下請けへ再委託する場合は、契約内容の見直しが急務です。
(3)元請との連携・信頼関係の再構築
- 元請にとって、再委託先が信頼できるかどうかがこれまで以上に重要
- 「ちゃんと運べる」「ルールを守れる」会社であることを示す必要があります
信頼を失えば、そもそも案件の紹介自体が減る可能性もあります。
(4)社内教育と周知
- ドライバーや配車係も、新しいルールを理解しておく必要があります
- 「これは再委託NGの案件かもしれない」と現場で気づける力が今後求められます
5. 最後に──現場目線で変化に向き合う
この法改正は、一部の業者にとっては厳しい内容かもしれません。しかし、長期的には「適正な取引関係の構築」「安全管理体制の整備」「ドライバーへの正当な報酬」につながる可能性もあります。
中小の運送会社にとっては、自社の足元を見直すチャンスでもあります。今後さらに規制が強化されることも見据え、まずは自社がどのような委託構造にあるのかを把握し、1つずつ改善していくことが求められています。