2025年6月4日に成立し、同月11日に公布された「貨物自動車運送事業法」の改正により、委託段階を2次までに制限する努力義務が設けられました。この努力義務の施行日は2026年4月1日です。3次請け以降への再委託を一律に禁止する制度ではありません。
現場で日々走る中小の運送会社にとって、今回の改正は決して他人事ではありません。本記事では、何が変わったのか、どんなリスクがあるのか、そしてどんな備えが必要なのかをわかりやすく整理します。
1. トラック新法で何が変わったのか?
2026年4月1日に施行された委託次数に関するルールのポイントは、以下のとおりです:
- 真荷主から運送を引き受けた元請事業者が、他の運送事業者の運送を利用する場合が対象
- 元請 → 1次委託先 → 2次委託先という委託段階を目安に、2次委託先から先への再委託を抑制するよう努める
- この努力義務について、罰則や行政処分は設けられていない
これは、いわゆる「多重下請け構造」を是正するための措置です。荷主から見えにくい再委託先まで仕事が流れてしまうことで、責任の所在が不明確になり、末端のドライバーの待遇や安全管理にも悪影響が出ていました。
2. なぜ「2次請けまで」を目指す努力義務が設けられたのか?
背景には以下のような問題意識があります:
- 過度な中抜きによる運賃の圧縮
- 運送実態がない名義貸し業者の存在
- 荷主と実運送者の間に距離があり、責任の分担が不明瞭
この構造では、最終的に運ぶドライバーや実運送会社が“割を食う”形になりやすく、安全管理やサービス品質にも影響が出やすいのが実態です。こうした状況を是正し、「誰がどの責任を担うのか」を明確にするために、国土交通省は委託構造の透明化に踏み切りました。
3. 努力義務と罰則・行政処分の関係
国土交通省の改正法Q&A(問3-5)では、委託次数の制限や健全化措置の努力義務について、罰則や行政処分は設けていないと説明されています。次の点を分けて理解することが大切です:
- 3次請け以降になったことだけで、一律に違法な再委託として処罰されるわけではありません
- 運賃・料金を不当に据え置くなどの違反原因行為が疑われる場合は、トラック・物流Gメンによる是正指導の対象になります
委託次数の努力義務と、違反原因行為に対する是正指導は別の仕組みです。この努力義務に取り組まないことを理由に、直ちに業務停止や許可取消となるという説明は正確ではありません。他の法令上の義務は、それぞれの規定に沿って確認する必要があります。
4. 中小運送会社が今から取るべき対応策
(1)現在の委託構造の棚卸し
- 自社がどこから仕事を受けていて、それが何次請けにあたるのか
- 下請けに回している場合、元請から数えて何段階の委託になっているか、段階を減らせるか
まずは社内・協力会社間の委託関係を「見える化」しましょう。
(2)契約書・運送指示書の整備
- 「書面でのやりとり」がこれまで以上に重要になります
- 誰が誰に委託しているのか、責任の所在が書面で分かるように
とくに下請けへ再委託する場合は、契約内容の見直しが急務です。
(3)元請との連携・信頼関係の再構築
- 元請にとって、再委託先が信頼できるかどうかがこれまで以上に重要
- 「ちゃんと運べる」「ルールを守れる」会社であることを示す必要があります
信頼を失えば、そもそも案件の紹介自体が減る可能性もあります。
(4)社内教育と周知
- ドライバーや配車係も、新しいルールを理解しておく必要があります
- 委託段階を増やさないために、再委託の前に元請や配車担当へ確認する手順を共有しましょう
5. 最後に──現場目線で変化に向き合う
この法改正は、一部の業者にとっては厳しい内容かもしれません。しかし、長期的には「適正な取引関係の構築」「安全管理体制の整備」「ドライバーへの正当な報酬」につながる可能性もあります。
中小の運送会社にとっては、自社の足元を見直すチャンスでもあります。今後さらに規制が強化されることも見据え、まずは自社がどのような委託構造にあるのかを把握し、1つずつ改善していくことが求められています。
訂正・更新(2026年10月5日):成立日・公布日・施行日を整理し、委託次数の制限が努力義務であること、および罰則・行政処分の説明を訂正しました。
出典:参議院「貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律案」、国土交通省「トラック適正化二法について」、国土交通省「改正貨物自動車運送事業法Q&A」(2026年3月31日時点、問3-5・3-6)。制度の詳細は最新の公式資料をご確認ください。

